積水ハウスの普遍の美×エクステリア_名古屋市北区 W様邸
スタイル | ベーシックスタイル |
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概要 | 第一種住居地域、敷地面積 約150坪 東側道路 寄棟の木造平屋建て(積水ハウス) 敷地分割にて西南隣地に低層マンション |
軒の水平ラインが美しい平屋建築にそうように、塀・エントランスゲート・シャッターガレージの全ての要素を一本の水平ラインがつないでいるエクステリアデザインがお分かりでしょうか。
緩やかな斜度の寄棟の屋根、軒の深い庇、南向きの大きな窓と、木のしつらい。積水ハウスの住宅には多くの日本人が持っている感性にスッと馴染むような安心感があります。
しかし積水ハウスの家のエクステリアの多くは、建築の個性が分かりにくいためか「デザインより機能性を優先した特徴のないエクステリア」になりがちです。例えば、エクステリアメーカーのアルミ製品で囲まれたエントランスや、ものものしいカーポートが家の外観を覆ってしまっているような間口。デザイン配慮が感じられず、素晴らしい住宅がとても残念です。
では、積水ハウスの外観に合うエクステリアとは何でしょうか?
それは建物の印象と同じく、斬新さや目を引くようなデザインではない「安定した普遍の美しさ」がキーワードです。
「安定した普遍のデザイン」はFJデザインのカテゴリー分けではベーシックスタイルに分けられています。
とは言ってもベーシックスタイルとしての決まったデザイン手法はありません。
W様邸の事例をご覧いただきながらデザインの考え方を少しご紹介いたします。
少し近づくと、ゲートが立体的に見えてきます。建築の木調の軒と同調するゲートの庇。エクステリアはシンプルで、あくまで主役である奥の建物を意識させます。
意匠は和を意識したコンサヴァ(conservative=「保守的な」「控えめな」の意)スタイル。華美な装飾がない代わりに、タイルや鏝仕上げの塗装などの質感にこだわった仕上げを行い、上品な印象を受けます。ファッションで言えば、高級な生地で仕立てられたスーツと言ったところでしょうか。
連続する壁で平面的になりがちなファサードに、景石と樹木の坪庭を配置した事で、空間に奥行きが現れます。
そしてこれは来客をお出迎えする玄関に置かれた一幅の絵のような存在です。昔の住宅にはどんな小さい家にも見られた玄関前の小さな庭。なくても機能は変わらないけれど、家の品格を表すような存在です。門の内側に広がる清廉な和の空間を期待させます。
庭園
建て替えにあたって、旧宅の広大な日本庭園を可能な限り再現したいとの希望でした。ただし庭の面積は当時の1/5までスケールダウン。これは、住居を受け継がれる家族が今後の維持管理を考えて困らないためでもあります。リメイクのため、残す樹木、石や灯籠を厳選し、現代の庭に造り替えます。
マンションエントランス
敷地分割で併設で新築された低層マンションの外構も合わせて設計から行いました。
マンションは住宅とは完全に仕切られており、意匠も切り離して考えています。現代的な外観に合うエントランスの設計は、駐車場、エントランスサイン、アプローチと駐輪場と、機能と使い勝手を優先して計画。植栽は旧邸のソテツなども再利用。
夕景
Design/Produce by 加藤 徳之